ディストリビューターとは
自動車のエンジンを点火させるには、バッテリーからの電力を高圧にして分配しなければならないが、そのイグニッションコイルによって増圧された電気を各気筒のスパークプラグに分配する分配器がディストリビューターである。 最初の信頼できるバッテリー電力による点火システムは、1910年にデルコ社のチャールズ・ケッターリングが開発し、同年のキャデラックで初めて導入された。
ディストリビューターは長い歴史の中で幾多の改良を施されてはきたものの、高温の環境に弱いため高回転時に不調を発したり、電気ケーブルの延長が長くなりロスする電力が増えると行った欠点を抱えていた。そのため最近ではディストリビューターではなくダイレクトイグニッション方式が使われることが多くなった。
構造と機能
ディストリビューターは、エンジン回転と同期して駆動されるディストリビューターシャフトを備えた本体部分と、高電圧を分配するローターを内部に備えたディストリビューターキャップで構成されている。現在一般的となっているOHCタイプのエンジンにおいては、主にカムシャフトの回転から分配するタイミングを同期しているものが多い。
ディストリビューターの主な機能は、ローターによる各気筒配電機能、コンタクトポイントによるイグニッションコイルの電圧増幅機能、進角装置によるエンジン回転数・混合気濃度に応じた点火進角機能の3つが挙げられる。
配電機能
イグニッションコイルにて発生した高電圧は、まずキャップ中央の電極からディストリビューター内に入り、その後ローターとキャップを介して各気筒に配電が行われる。ローターはディストリビューターシャフトと一体で回転し、各気筒の上死点にあわせてディストリビューターキャップ内の各気筒に対応した接点に点火電流を配電するようになっている。ローターとディストリビュータキャップの接点同士は厳密には完全な接触はしておらず、ローターがキャップの接点付近を通過するタイミングで高電圧が火花として伝達されることになる。
電圧増幅機能
イグニッションコイルの内部には一次コイルと二次コイルが内蔵されており、ディストリビューター内部のコンタクトポイント(コンタクトブレーカー、断続器)がエンジン回転に合わせて開閉を繰り返すことで電圧が増幅される。このコンタクトポイントの開閉はディストリビューターシャフトに備えられたカムによって行われる。コンタクトポイントには多くの場合コンデンサーが備えられており、ポイント部分での必要以上のスパークを抑制してポイントを摩耗から保護するようになっている。
エンジン回転数に応じた点火進角機能
レシプロエンジンはエンジン回転数が高まるとピストンスピードが高速となっていく。しかし、爆発に伴う火炎伝搬速度は混合気が同一量の場合ピストンスピードに関係なく一定の為、配電タイミングが常に一定のままではエンジン回転が高まるのに従って、最適な点火タイミングが次第にずれていくことになってしまう。
これを防ぐ為にディストリビューターシャフトにはガバナーと呼ばれる装置が取り付けられている。ガバナーはシャフトに平行に取り付けられた一対の錘であり、エンジン回転数が高まると遠心力で外側に広がることでコンタクトポイントの接触タイミングをずらし、回転数に応じて点火時期を微妙に早めることで、ピストンスピード上昇による点火タイミングのズレに対応している。
アクセル開度に応じた点火進角機能
エンジンブレーキ使用時などアクセル開度が小さく、エンジン回転数に対して混合気が薄い場合、燃焼室内の火炎伝搬速度が遅くなる。 こうした場合理想的な燃焼を行う為には点火タイミングをあらかじめ少し進めておく必要がある。
前述のガバナーによる点火進角はエンジン回転数に完全に依存した制御となる為、これとは別にアクセル開度に応じた制御を行う為に、ディストリビューターにはインテークマニホールド負圧によって動作する真空進角装置が備え付けられている。
エンジンブレーキ使用時など、エンジン回転数に対してアクセル開度が小さくなった場合にはインテークマニホールド内に強い負圧が発生する。これによってディストリビューターに取り付けられた真空進角装置のダイヤフラムが作動してコンタクトポイントの接触タイミングをずらし、点火時期を微妙に早めることで、アクセル開度変化による点火タイミングのズレに対応している。